第12章 準備と突入と、想い。
「寒いな・・・」
ハァ、と白い息を吐き首をすくめる。
あのあと、私はスイレンの気が変わらない内に、とさっさとその場を去った。
(スイレン、最後まで不機嫌そうだったな・・・)
ふと、誰かの気配を感じた。
(誰・・・!?)
そう思うのが早かったか、遅かったか。
ソレは瞬きより速く、私の背後にいた。
(うそ・・・)
冷や汗をかく、というのはこのことをいうのだろう。
私は反応の一つも出来ずに、ただ固まっただけだった。
「っ・・・!」
ワンテンポ遅れて、私は身体を反転させソレに向かって手をあげ―――
しかし、その手はソレの手によって掴まれた。
「・・・・!」
真っ暗なので相手も私もお互いの表情は見えない。
暗い森の中、今度こそ私は、心臓が止まるかと思った。
「おい・・・?」
「えっ・・・?」
不意に聞こえた声は、よく聞きなれた声だった。
「ハル、俺だ」
「――――!?」
「何でここに・・・」
「イタチ兄さん!?」