第2章 子供時代と一つの事件。
団子を平らげ、店を出てからも私はイタチに抱っこされながらぶらぶらと当てもなく道を進んでいると、唐突にイタチが聞いてきた。
「・・・ハル、何か欲しいものはある?」
「・・・ないよ?」
「そうか・・・なら・・・将来、なりたいものは?夢はないのか?」
「・・・・・」
「・・・まだ、分からないか。ちなみに俺は、火影になりたいんだ。今の三代目様のような立派な人間になりたい。・・・まあ、俺には無理だろうけどな」
(そんなことない)
いつになく自嘲気味なイタチに思わず、言葉が漏れた。
「・・・そんなことないよ。イタチ兄さんは凄いもん。今だってすごい頑張ってるんでしょ?イタチ兄さんには火影の器がある。ハルは、イタチ兄さんのこと尊敬してるよ」
ボソボソと、呟くような声の大きさで言った。
ふと、イタチを見上げると、驚いたような顔をして、それからフッと笑った。
「・・・ありがとな、ハル。おかげで元気が出たよ。しかし、お前、”尊敬”なんて難しい言葉よく知ってたな」
(・・・あ、やっべ。やらかした・・・!)
「・・・う、うん。こ、この前母さんに教えてもらったっていうか・・・その・・・」
精一杯の言い訳。
とてつもなくしどろもどろだけど、どうかだまされてください。
「・・・そうか。ま、母さんならしかねないな。で、これからどうする?何かしたいこと、ある?」
(・・・セーフ!あぶないあぶない。これからはもっと言動に気をつけなきゃ)
ポロリと口をついて出たのは。
「・・・しゅぎょーしたい」