第12章 準備と突入と、想い。
(冷静に、冷静に・・・)
落ち着け、自分。
慎重に、相手の急所を確実に狙え。
緊張はピークをとっくのとうに超え、心臓はバクバクと音を鳴らしている。
クナイを持つ手は、情けないけど少し震えている。
(――怖い)
頭の半分は恐怖で占めている。
だけど、駄目だ。
逃げては駄目だ。
死んでも助けるって、決めたんだ。
ここで隙を見せたら、死ぬ。
ああ、でも、私は致命傷でも死なないんだっけ。
(どうしようもないくらい、心細くなる)
『ハル?』
「ん・・・?」
『大丈夫。僕がついてるから』
スイレンはそう言った。
「・・・うん」
『だから、肩の力抜きな?』
その言葉通りに肩の力を抜く。
「そう、だね・・・」
ここでうじうじしてたって何も変わらない。
溢れ出てくるネガティブな気持ちに蓋をして、頭を空っぽにする。
「ありがとう、スイレン」
脳裏に浮かぶのは、イタチとサスケ。
(ごめんね、盗賊まがいさん)
私、まだあそこに帰りたいから。
そうしている間にも、敵はどんどん減っていき、あと一人となった。
「あと一人・・・!」
最後に鳩尾への蹴りをお見舞いすると、あっけなく倒れた男。
それを見届けると、私は辺りを見渡した。
(後ろから追ってきていたのは・・・)
そう、大蛇丸の手下かもしれないヤツだ。
(そこか・・・!)
「・・・っ!」
クナイを勢いよく投げる。
しかし手応えはなく、外してしまったことに焦る。
「チッ・・・」
『ハル!ネネが全員連れて逃げたみたいだよ!』
「分かった」
逃げるが勝ちだ、と自分の中でその結論に至らせてスイレンに飛び乗る。
スイレンはそれを確認すると、勢いよくジャンプした。