第12章 準備と突入と、想い。
私は焦っていた。
「チッ・・・」
『ハル、お口が悪いよー?』
「仕方ないじゃん・・・」
後ろから誰かの気配がするのだ。
微かだけど、後をつけられている。
(誰だ・・・?まさか、大蛇丸の手下とか?)
だとしたら、挟み撃ちされてしまう。
(いや・・・でも、今はそんなこといっか。その時はその時で・・・)
今やるべきことだけを考えよう。
『そろそろ人間たちとご対面だよ。準備はいい?』
スイレンのその言葉で私の中の緊張が一気に上がる。
「・・・うん」
深呼吸を一つする。
そして、今まで喋らなかったネネに声を掛ける。
「ネネは他の子たちを助けてね。人間たちは、人間の私が相手するからさ」
そう言うと、ネネは頷いただけだった。
「じゃあ、行こう。頑張ろうね」
フードから覗く私の目が、一つの瞬きの間に、赤く染まった。
「んだテメェ!!」
「ああ!?ガキか?」
いくつもの男の声がする。
男いわく“盗賊”がいたのは森の中だった。
「テメェ、自分がやったこと分かってんだろうな!!」
私の周りには既に数人が倒れている。
「ふん・・・」
それを足蹴にすると、他の人間は怒りを露にした。
「テメェ・・・!」
「・・・」
一言も喋ることなく、男たちに飛びかかる。
“盗賊”のといえど、それは格好のみで元はただの金しか頭の無い、なりきりだった。
(―――と、いうのがさっきまでの感じなんだけど・・・)
果たして全員がそうなのかは分からない。
気を抜かないように自分に言い聞かせる。
「・・・スイレン」
『はいはーい』
私がスイレンを呼ぶと何とも気の抜けたような返事が返ってきた。
(ちょっと数が多いな・・・)
その数ざっと十人。
荷車は二つあって、多分両方入ってるんだろう。
ネネが二つとも上手く出来ることを頭の片隅で祈る。
「ごめんけど、ちょっと手伝ってくれない?」
『うん、元よりそのつもりなんだけどね』