第12章 準備と突入と、想い。
「・・・にしても、本当に寝起き悪いんですねえ」
ハルが何も反応しなくなったのを見る限り、また寝たんだろう。
鬼鮫はそう思って、不思議な体勢のハルに近付く。
「・・・こんな体勢で寝れるなんて、ある意味凄い・・・」
例えるなら、干された布団。
白いオオカミの背で、ぐっすり眠っている彼女の寝顔は年相応の少女にしか見えない。
だけど、この子は確かにあの天才忍者と同じ血を引いている。
「ふん・・・」
こんな無警戒に自分の前で寝ていることなんて、イタチでは考えられないだろう。
不意に、いつもイタチがやっているようにハルの頭を撫でたくなった。
そーっと静かに、ゆっくりと手を伸ばす。
あと少し、そんなところで鬼鮫のささやかな試みは思わぬ形で妨げられることとなった。
「ぐっ」
顔面に何かが直撃して、反射的にとっさに目を瞑る。
すぐさまソレを自らの大きな手でつかんで見てみる。
「・・・フクロウ?」
まるでハルに近づくなと言わんばかりだ。
そしてふとその方を見やると、彼女を乗せている白いオオカミがこちらをじっと見ており、鬼鮫を威嚇している。
「無理・・・そうですね・・・」
鬼鮫は掴んでいたフクロウを離すと、呟いた。
「・・・やっぱり・・・全然無防備じゃない・・・」
十分後。
息を切らせながら慌ただしく居間にやって来たのはイタチだった。
「ハァ、ハァ・・・ハルを見てないか」
「そこにいるわよ」
起きていた小南が何一つ変わらぬ顔で、ある一点を指さす。
イタチがそちらへ視線を向けると、そこにはすやすやと寝息を立てている妹の姿があった。
傍にはいつもいる白いオオカミとフクロウがいる。
イタチは安堵の溜息をつくと、そちらに近付きハルを抱き上げた。
「はあー・・・」
イタチは頭をガシガシと掻きながら、妹の名を呼んだ。
「・・・ハル」
イタチの言葉にゆっくりと目を開けたハルは小さく声をあげ、イタチの胸元に顔をうずめたのだった。