第12章 準備と突入と、想い。
『ハル、起きて』
少しの息苦しさと、何度目かのその声にうっすらと目を開ける。
「何」と聞いたつもりだがおそらく口を微かに動かしただけで、声は出てないと思う。
『ハルってば』
再び声が聞こえるが、それでも意識は奥深くにある。
先程と違うのは、手にふさふさした何かが当たっていることだ。
声の持ち主は言わずとも分かるだろう。
「・・・す・・・いれ・・・ん?」
目は閉じたまま、頭を撫でてやる。
すると、『起きてよー・・・』と言う声が聞こえたがそれは建前だけで段々と静かになっていった。
『―――起きろや!』
「ほぐっ」
顔面に何か直撃。
そしてそのまま私の顔の上に乗るので、息苦しさに耐え兼ね、それを持ち上げる。
「静かに・・・」
『ぎゃっ、あ、主様ぁぁあ!』
『あ、ずるい。僕もそれやってほしい!』
そして、さすがにうるさいので私も目を開ける。
「・・・?」
『あ、おはよう、ハル。今日のことなんだけど・・・って、まだキミ起きれてないよね・・・』
いつものように、ずるずるとオオカミ姿のスイレンに身体を預けるとまた目を閉じた。
「・・・おや、おはようございます。今日は早いですね」
「お・・・はよ・・・ざいま・・・す・・・鬼・・・鮫さ・・・」
数分後。
居間に行くと、既に鬼鮫がそこにいた。
「・・・イタチさんの言う通り、本当に寝起き悪いんですねえ」
「・・・・・・・」
その言葉が聞こえたのが最後で、私はまた目を閉じた。