第12章 準備と突入と、想い。
路地裏に入ると、男たちは下品な声をあげて、急に笑い出した。
奥は行き止まりらしく、私はその方へ身体を投げられる。
すると、小南が突然私の名前を呼んだ。
「・・・?」
「ハル、目を閉じなさい。それから耳も塞いで」
「おい、テメェ何言ってんだ」
「早く」
私が指示に従ったのを見ると、小南は「いい子ね」と言った。
それからは、あまり分からない。
ただ、唯一、塞いだ耳から微かに聞こえたのは男たちの短い叫び声だった。
「ハル」
トントン、と肩を叩かれる。
思わず身体を跳ねさせると、手のひら越しに柔らかい声が聞こえた。
「ハル、もういいわよ。よく頑張ったわね」
「―――・・・?」
うっすらと片目を開けると、目の前には小南の顔があった。
「こ、小南ちゃ、」
「さあ、早くここを離れましょう。ハル、悪いけどもう一度目を閉じてもらえるかしら」
「・・・?」
チラ、と小南の後ろに見えたのは何枚もの白い紙に包まれた何かが三つ。
それがあの男たちだと気付くのに、時間はあまりかからなかった。
「・・・!」
私が気付いたことに気が付いたのか、小南は私を抱き上げるとそのまま自分の肩に私の顔を押し付けた。
「ハル、もうちょっと我慢して」
そう言うと、そのまま飛び上がった。
瓦の上に立つと、ようやく顔をあげることが出来た。
「小南ちゃん・・・大丈夫?」
「平気よ。このくらい、何てことないわ」
「本当・・・?」
ほっとため息をつくと、今度は逆に私がため息をつかれた。
すると、さっきまで私たちがいた路地裏に誰かの声が響いた。
「ん・・・誰か来たわね」
「誰?さっきの仲間?」
と言ったのはどうやら正解のようで、また数人の男の声が聞こえた。