第12章 準備と突入と、想い。
姿が見えなくなると、沈黙が辺りを包んだ。
(やばい・・・!私、まともに小南と一対一で話したことなかったや・・・)
パニックに染まりつつある頭の中で、やっと口をついてでたのは「えっと・・・」という曖昧なものだけだった。
「・・・あの、小南・・・さん?」
ぎこちなく私が彼女の名前を呟くと、思ったより優しい声が返ってきた。
「あら、そんな堅苦しい呼び方しなくていいのよ。そうねえ・・・好きなように呼びなさい?」
微笑む小南。
うん、やっぱり美人だ。
周りはそんな彼女をチラチラと見ていた。
(・・・私も姿変えた方がいいのかな・・・)
だって、このままじゃ小南がナンパされかねない。
まあ、小南は着いていかないだろうけど。
すると、キョロキョロしていた私を何か勘違いしたのか、小南は私の名を呼んだ。
「大丈夫よ、私がついている限り、あなたを危険な目には合わせないわ」
・・・どうやら、私が不安になっていると思ったらしい。
「・・・こ、小南、ちゃん・・・?」
「うん、いいかも」
「えっ?」
「“ちゃん”付けされるなんて、久しぶりだわ」
そして、数十分後。
(・・・大丈夫かな、小南ちゃん)
「・・・しつこいわね」
「だぁーかぁーらぁー、俺らと少し遊ぼって言ってるだけじゃん」
「そーそー!」
先程までの柔らかい笑みとはうって代わり、小南の眉間にはうっすらシワがより、無表情だった。
にやにやと彼女を取り囲む三人の男たちはどこからどうみても下衆にしか見えない。
私には目もくれず、だが、小南は私の手を離さずに握ってくれていた。
(やっぱ言わんこっちゃねえ・・・!!)
私の予感的中。
そう、私たち、否、小南はいわゆるナンパというものに遭っていたのだった。
(いや、美人だから仕方無いけど・・・)
今は不機嫌なのが私にでも分かるんだから、この男たちも気付いているに違いない。
それでも止めないなんて、先程の小南の言葉通り、しつこい。