第12章 準備と突入と、想い。
「ハル、俺が“もういい”って言ったのはそういう意味じゃない。ただ、」
「ただ?」
「・・・今度からどこか行くときは、頼むから俺に一言いってくれ」
そう言ったイタチの表情は少し寂しげで、私は首を縦に振るしかなかった。
イタチはそんな私を見ると、納得したようで話を切り上げた。
だけど私は、ポカーンとしたままで何も言えなかった。
「ハル、戻るぞ?」
その言葉にはっとしたときには私はイタチに抱き上げられていた。
移動しながらふとイタチが言った。
きっと、イタチの部屋に行くのだろう。
「ハル、お腹空いてるか?」
聞けばまだ夜ご飯はまだだということで、私もご飯にありつけるようだった。
そういえば、私今日何も食べてないや。
それを自覚すると同時に、急にお腹が減ってきた。
「うん。今日何も食べてないや」
「・・・今日はしっかり食べろ」
――――妹が帰ってきた。
そのことに俺は心の底からホッとした。
のも束の間、目を放した隙にまたどこかへ行ってしまった。
年を重ねるごとに、俺にはハルの考えることが分からくなっていた。
頭がいいのか、もしくは自由奔放、天真爛漫なのか。
おそらく前者だと思うが、そのせいかすぐにどこかへ行ってしまうことが度々あった。
その度に俺は肝を冷やす。
「ハァ・・・もういい」
俺がそう言ったとき、ハルの目はゆらゆらと揺れていた。
小南からのお下がりの服はまだ少し大きいくて、その長い裾をぎゅっと握りしめていた。
ハルは、怯えている。
俺に? いや違う。
捨てられることに、だ。
そう悟ったときには、思わずハルの名を大きな声で呼んでいた。
と同時に、この子はどこまで考えているのかと思った。
だって、そんな小さいお前が、そんなこと考えるなんて。
(こんなとき、父さんと母さんはどうしただろう)
抱き上げたハルの身体は相変わらず軽くて、それなのに今日は何も食べてないと言う。
思い出したように言うハルを軽く小突いて、自室へと足を運んだ。