第12章 準備と突入と、想い。
アジトの入り口に着くと戻ると、辺りはもう既に暗くなっていた。
「・・・暗いなあ・・・」
『そう?僕は平気だけどね』
『ウチも。元々、夜しか動かないからね』
スイレンから降りてそのまま歩く。
居間の光が漏れていて、ふいに暖かさを感じる。
「・・・光の効果ってヤツ・・・?」
ボソリと呟き、一人立ち止まる。
そんな私を不思議に思ったのか、スイレンとネネがこちらを見上げる。
『どうしたの?』
「あ、ううん。何でもないよ―――お?」
再び足を進めようと前を向くと、誰か仁王立ちしているのが見えた。
「・・・ええっと・・・」
「ハル。随分と長い風呂だったな」
そういえば、私風呂からの帰り道だった。
そして、仁王立ちしているのは、
「あー・・・い、イタチ兄さん」
我が兄であった。
居間には私たち以外誰もおらず、しーんと静まり返っていた。
「ちょっと、外に出てて・・・」
「・・・」
ヘラ、と笑うとイタチは何も言わずに私を見た。
怒っているのが分かる。
まあそりゃそうだ。
「・・・ハァ・・・。もういい」
「えっ・・・?」
“もういい”
それは、どういうことなんだろう。
私がいらない?
もう居場所はない?
(前の世界みたく、私はまた――)
段々と思考が黒く染められていくのが分かる。
ぐるぐるぐるぐる、嫌なことばかり頭に浮かぶ。
もしかして、もしかして―――
「もう・・・私は・・・いらない・・・?」
出た声は、思ったより普通だった。
目が合ったイタチの表情が変わったのが分かった。
「・・・いらない。・・・私は・・・いらない」
“元々、産まれるべきじゃなかった人間”
「ハル!!落ち着け。さっきのはそういう意味で言ったんじゃない」
「じゃあ、どういう、意味?」
いつのまにか、隣にいるスイレンとネネはどこかへ行ってしまっていた。