第10章 逃げ込んだ先に。
「ハル!!」
突然、イタチが大きな声を出した。
「っ」
今までの自分はまるで別の人間のようで、あの頃の“私”が今の“私”の対処法となっているようだった。
そして、イタチが大きな声を出したことでハッとなる。
「おい、ハル!!」
「・・・・・・」
「ごめんな、こんなことお前に言わすつもりじゃなかったんだ」
「・・・・・・」
「ハル・・・!」
目の前の少女は、本当に自分の知っている妹なのか。
イタチがそう考えるほどに、今のハルは別人に見えた。
そして、何回か呼んだ後。
「ご、ごめんね、イタチ兄さん」
私は自分を取り戻していた。
だけど、私を見るイタチの目は不安そうだった。
(そりゃそうだよね。誰があんな言葉教えたのかっていう話だよね)
「・・・ねえ、イタチ兄さん、」
「何だ?」
「お腹空いた。みんなのところに行こう。・・・さっきはごめんね。勝手なことしてごめんなさい。もうこんなことしないから」
私がそう言うとイタチは「そうか」と短く言い、立ち上がった。
「えっ?」
――ただし、私を抱っこしたままで。
そして、居間に行くと。
「イタチさん、待ってましたよ。ご飯はちゃんと残してあります、ハルさんの分も。他の者は先に部屋に戻りました」
そこには、鬼鮫と小南がいた。
小南は相変わらずの綺麗な顔で、こちらに軽く微笑んだ。
「すまないな」
『ハル、大丈夫?』
「えっ、スイレン?」
気付けば白いネズミが私の服の中から顔を出していた。
『うん、そうそう、僕だよ。いやね、ハルが連れていかれるから焦って小さくなったんだよ』
「へえ・・・」