第10章 逃げ込んだ先に。
「ねぇ、本当にあれで良かったのかな」
外に出ると、月が出ていてとても綺麗だった。
『さあね。でも、キミがそうしなきゃいけないと思ったのなら、そうなんじゃないかな』
「・・・そう、かな」
まるで、あの夜と同じ。
月は私たちを嘲笑っているのかと思うほど、あの夜には不釣り合いな綺麗さだった。
「・・・スイレン、帰ろっか。ああ、違うね。戻ろっか」
『何が違うの?』
今、戻れるところは暁のアジト。
あそこには、イタチがいるから。
けど、あそこは自分の居場所は―――。
「私には、イタチ兄さんがいるから。あそこは、イタチ兄さんの帰るところであって、私のじゃない。―――・・・私は、イタチ兄さんを独りにしないって、あの時決めたから」
だから“戻る”なの、と言った。
だけど、スイレンには上手に伝わらなかったらしく、「?」のままだ。
『よく分からないなあ』
「まあ、スイレンには難しいかもね」
夜は少し肌寒くなっていて、私はふと身震いをすると、スイレンを撫でて言った。
「よし、行くか!」
『うん。ちゃんと掴まっててね』