第10章 逃げ込んだ先に。
「今、“ハル"って・・・?」
そして私は、自身が痛恨のミスをしてしまうことになる。
「ち、違うの!ちょっ、一回落ち着こう?ね?“サスケ兄さ――”――あっ!?」
嘘だろ、と思わず自分で口に出してしまった。
「・・・お前、本当の名前は名前はなんだ?」
今度こそ、サスケに聞かれてしまったようだった。
混乱しているのか、それとも動揺しているのか。
サスケは後に続く言葉を必死に探しているようだった。
「は・・・?」
今までの言動を合わせて、考えられる可能性は――――。
「は・・・ハル・・・?」
サスケは喉から絞り出すような、どこか震えた声でそういった。
サスケの脳裏に映っているのは、自分に似た黒い髪、黒い瞳を持って生まれてきた、柔らかく笑う妹。
そして――――
「いや、そんなはずはない。もう、アイツは・・・」
血だらけの妹。
サスケは何かを思い返すように、目を閉じた。
サスケの言う“アイツ"というのは私のことなのだろうか。
(とにかく、これ以上ここにいるわけにもいかないな・・・)
「これじゃあ、分が悪いね。今回は帰るね。また、今度」
まだ完全に気づかれるには早すぎる。
確信が持てていない今なら、まだ間に合う。
「は?ちょっ、ちょっと待てよ。まだ話は、」
「スイレン!行くよ」
「分かった。じゃあね、サスケ。
お前、うちは一族なんだから火遁ぐらいは使えるようになりなよ」
「じゃあ、バイバイ。また・・・」
そう言って、窓から飛び出した。