第9章 クロとサスケと。
「・・・どうしたの?」
『今日、僕は嬉しいことばっかりだったよ。・・・今朝、僕の名前大きい声で呼んでくれた。一緒に行こうって言ってくれた。頼ってくれた。・・・今までも、そう言ってくれた。だから、ありがとう』
「お、おう・・・?」
『僕のこと、ちゃんと見てくれる。人間はこんなに優しいんだね』
もっと早くに知っとけば良かった、とスイレンは言った。
が、ああ、やっぱりいいや。と言いなおした。
「・・・どうして?」
『僕がちゃんと人間と関わるのは、やっぱりキミが一番がいいな』
「・・・嬉しいこと言ってくれるね、カミサマ」
照れてるの?と聞かれ、照れてないと返す。
『僕ね、人間はバカな生き物だと思ってた。でも、こんなにも温かいんだね』
「そう、だね・・・。そう感じられるなら、スイレンも私も、運がいい」
『・・・?』
「・・・スイレンの言うとおり、人間はバカな生き物よ。温かいと感じるのは、それは、そこに愛があるから」
アイって何?
そう聞き返すスイレンに、私は言葉を探した。
「愛、って書くのよ。愛は、温かい感情。人間本来の温かい心。私は、すべての源だと思ってる」
『・・・どうして?』
「愛があったからこそ、この世界の私は存在してるの。父さんや母さん、イタチ兄さんが私を愛してくれていたおかげで今、私は生きてる」
『ふうん』
「・・・それが、前の世界の私と、この世界の私との、大きな違いよね」
自嘲気味に、どこか他人事のようにその言葉を吐き捨てた。
いまいち理解できていないスイレンが「じゃあ、」と言葉を続けた。
『僕は?僕は、そのアイ?愛か、それを知ってる?』
私よりも何百年と多く生きているスイレン。
だけど、その存在が故に温かさを知らないのだろう。
「うん。知ってると思うよ」
『思う・・・?』
「・・・あのね、感情っていうのは結構不確かなものが多いの。自分じゃよく分からなかったりするし」
『・・・・・・』
「・・・難しいかな。じゃあ、ちょっと違う話をしよっか」