第8章 兄の心配と妹の意図。
「何で、」
(ここに)
何も言えないでいると、彼女は微かに微笑んだ。
「元気だった?」
「あ、えっと・・・あの時はありがとうございました」
「いいの。―――しかし、大きくなったわね」
小南はしげしげと私を見つめるとしゃがみ、私と同じ目線になった。
「・・・その犬、どうしたの?見たときにはいなかったけど」
「・・・犬?」
『・・・僕は犬じゃない』
どうやら、スイレンのことを言っているようだ。
「可愛いわね。名前は何て言うの?」
「スイレン・・・っていいます。あ、と・・・この子、オオカミです。犬って言うとちょっと機嫌が悪くなるので・・・」
「あら、そうなの?ごめんね」
スイレンの頭を撫でてやると、満足そうにしていた。
“人じゃない姿の僕の声は、人間ではキミしか聞こえないから、そこら辺、よろしくね”
前に言われたことを思い出す。
「あ、お腹空いたんじゃない?とは言ってももうすぐ夕飯だけどね。良かったら私の部屋来ない?お菓子ならあるから」
「・・・あ、はい、行きます」
『餌付けされてる!?』