第8章 兄の心配と妹の意図。
「おや、今日は早いんですねイタチさん」
「別に普通だ」
「よく言いますよ。いつもは低血圧でイライラしてるくせに」
「・・・・」
広間には鬼鮫しかおらず、朝食の準備をしていた。
(ちなみに、いつも鬼鮫がご飯担当である。)
「・・・おや?その子はいつかの・・・」
「覚えているのか」
「ええ。そりゃあなたが抱き抱えていたのですから強く印象に残っていますよ」
「・・・そうか」
ハルを抱っこしたまま席につく。
まだ起きる気配がない妹の頭を撫でる。
そうしていると、暁の紅一点、小南が起きてきた。
「あら、二人ともおはよう。・・・イタチ、今日は珍しく早いのね。機嫌も悪くないようだし」
「おはよう。それは鬼鮫にも言われたんだが」
「無自覚が一番めんどくさいのよね」
「・・・小南さん、おはようございます。まあ、イタチさんもこれに懲りて低血圧治してくださいね」
「治るならやってる」
小南の辛辣な言葉が容赦なく降ってくるがそんなこと気にしない。
「・・・あら、その子。あのときの?」
「ああ。その節では迷惑かけた」
「いいのよ、あれくらい。―――あの時は何事かと思ったわ。すごい形相で私の部屋に入ってくるんだもの」
「・・・」
そんなに酷い顔してたのか。
どんなんだったんだろう、と想像しつつも出来なかった。
「可愛いわねぇ、私も妹が欲しかったわ」
「やらんぞ」
「・・・そんな間髪入れずに言わなくても。いやしかし、こんな可愛い小さい子を傀儡にしようとか言ったのは本当にどこのどいつかしら?」
ねぇ?と小南がチラリと目線を横にやる。
釣られて、二人もそちらを向く。
「・・・」
「おはよう、今日は早いのね。―――サソリ」
「・・・」