第5章 指輪滑伝〔黒〕(逆ハー夢)第一章
「あの指輪はですね、婚約者にいただいた指輪だったのですよ。
あれがなくてはお嫁にも行けません…ョヨヨ」
私は半ば強引に泣き落としに入り、無事に孫家にお手伝いさんとして侵入いたしました。
こちとら命がかかっているようなもんですからね、その辺は度胸!女は度胸なんですよ。
思った以上に孫策さんはあっさり、「悪かった」と言って孫家に置いてくれました。
凌統さんも、飲み込んだ現場を検証してくれたので口添えしてくれた。
そんなこんなでわたくし、只今虎小屋で虎の世話をしております。
ええ、まあ小さいころとか動物園の飼育員さんとか一度はあこがれた職業でしたよ。でも、こんなのあんまりじゃないですか。
暗い表情でブツクサつぶやいていると、後ろからチョップを喰らわされた。
「アンタさぁ、文句ばっかり言ってるんじゃないよ」
「私口に出してましたか…!?」
やべぇ、と思って口に手を当てる。
「いや、何言ってんのかは聞いてないけどさ。
別に何言おうと俺には関係ないけど…!」
凌統さんってツンデレキャラだったのか、と思って私は思わずにやりとしてしまった。
何笑ってんの、と再びチョップを喰らわされる。
「孫策さん、ああ見えて結構責任感じてるみたいよ。一緒にいた俺も…責任の一端を感じなくもないし」
それで、その水桶持ってきてくれたのか。
口は悪そうだけど、けっこういい人なのかも。ツンデレだけに。