第5章 指輪滑伝〔黒〕(逆ハー夢)第一章
「と…虎ぁぁ!??」
2Mも離れていないそこには、なんと肉食系動物。
やヴぁい、私草食系なのに!
そんなことを思っている余裕ないのに、意味の無いことばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
「おーーい坊!ちと早いぞおめえ」
ぐるぐると駆け巡っているその最中、道の向こう側から派手な格好の男が走り寄って来た。
その姿はまごうことなき…
「うわあああうわああああああ!!!」
私は虎を見たとき以上にその男を見て驚いた。
「あ?妙な格好のおジョーちゃんだな。誰だ?」
「うわあああうわああああ!!!!」
普通にジョギングしながら現われたのは、なんと無双世界の孫策だった。
いや、普通に虎より驚くよ。だって虎は想像上の生き物じゃないもん。
「おいおい。おジョーちゃんの声に坊まで怯えてるぜ?俺ってそんな怖ぇの?」
「怖ぇえええです!!!」
もう虎とかどうでもいいよ、むしろ。
「…はっはっは。虎を迫力で押しちまうとかすげえ娘だな。気に入ったぜ」
そう言って孫策に肩を組まれた。
うっへぇ、ガタイがいいなぁ。
ずっしりと腕が肩にのしかかって、少しバランスを崩しそうになった。
「でもな、ここはうちの敷地内なんだ。勝手に入ると番犬が首根っこに食らいついてくるぜ?」
こいつは番犬じゃないんですか、と思いながら虎を見るが、あいかわらず私に怯えている。
しかし、さきほどからこいつは一体何のにおいをかいでいるんだ。
その鼻先を見ると、あの魔法の指輪だった。