第4章 そして別れ
「チョウ蝉!!許してくれ!!誤解だ!!」
「知りません、もう知りませんからね!今日という今日は!」
なんだ、この様子を見ると以前にも浮気したのだろうか。
「戦場にまでやってくるといような熱愛ぶり。わたくしの入る余地はありませんわ!どうぞご自由に!」
チョウ蝉がそう言ってそっぽを向くと、呂布はうなだれた。
さすがに申し訳ないので、ここでどっきりの種明かしをしようと思う。
「チョウ蝉さん、私ですよ、伊緒です!冗談ですから、あれは!」
「まああ、伊緒さん!このような場所に、…危ないです!」
私が呂布の後ろから顔を出すと、態度が一変。驚いて私の手を両手で掴んだ。
「いや~…二人が帰るときに、何かの間違いで、こっちの世界に来ちゃったみたいなんですよ…」
「え、よくご無事でしたね…」
「え、ええまあ…。それで、帰るのにはどうやらチョウ蝉さんの指輪が必要みたいで」
「これ、ですか?」
指輪、と聞いてチョウ蝉さんが首に下げている黒メノウの指輪を出した。
「あ、それ…かな?」
「奉先様、これでございますか?」
私とチョウ蝉が呂布を見ると、呂布は不機嫌そうに、
「まだ持ってたのか、董卓からもらった指輪なんて!」
と言った。
「まあ!あの方からもらったから持ってるわけじゃありませんわ、伊緒さんや変わった世界での思い出だから持っているのですよ」
呂布の言葉にチョウ蝉は少しムッとして答えた。
ちょっと間の抜けた空気に、防御拠点の兵士たちの士気が落ちてきている。