第4章 そして別れ
「本当に、帰るのか?…伊緒」
「…当たり前だよ…こんなところ、やだ。戦いばっかりだし、くさいし」
「俺が、そのうちこの国を治めて、ごちゃごちゃめんどくさいことはなくなる。ここに残れ」
「…そーなったら、戦いもくさいのも残りそうだからやだ」
私は、赤兎を操る呂布の後ろに乗っている。
途中拠点を落とす夏候惇を馬で轢いたが見なかったことにした。
人々の叫び、武器のぶつかり合う音。先ほどまではあそこにいたのに、今はすべてが夢のよう。ぼんやりとそれを眺める。
山道にさしかかると、倒れて動かなくなった人が道をふさぐように積み重ねられている。
それを見た呂布は舌打ちをすると、馬首を返した。
(姜維、無事かな…。孔明、どうしたかな?)
ここにいる人すべてには、死がとても近いところにある。そう思うと急に怖くなった。
「…」
私は思わず呂布の腰に回す腕の力が強くなる。
「落ちるなよ」
呂布はそう言って、スピードを上げた。
「うわ!ちょっと!無理!お尻痛い!!」
「黙れ!それどころじゃない!!チョウ蝉がァァ!!!!」
こいつにはセンチメンタルのかけらもない。