第2章 悪魔より賢く

甘い言葉が耳に囁く

遊んでしまえよ

さっきからその言葉が離れない
何故だろうか、どこかで聞いたような気がした

シャーペンを少し噛んで
一周回転

ペンが描いた透明な円の中に赤い果実が見えた気がした

世界一古い書物には
人間の罪が書かれてるんだって
誰かが昔、僕に言っていた

それは誰？
思い出せない
記憶と幻覚に惑わされて


ある日のこと
雨が降って、僕は白い建物に駆け込んだ
そこではある話がされてたんだ

蛇が一番初めの人間を唆して
人間は食べちゃいけない実を食べた
それから人は知識と引き換えに
苦しんで生きるようになったんだって

甘い囁きの声がする
食べてしまえ、って
遊んでしまえ、って

あぁ、これは悪魔の囁き
僕は蛇に騙されちゃいけないんだ

雨は降る
これは天の嘆きだろうか

僕はその中に飛び込んで
ポケットからペンを出して
そのまま天に投げ
落ちてきたものを手に取った

不安を投げ捨て
希望を手にして

僕は自分に微笑んだ