第10章 西海の鬼は悪鬼ですか?
そして朝、はいつも通り早起きをして幸村の鍛錬へと顔をのぞかせに行った。
は道場に入って中を覗くとそこには幸村と小山田、ではなく代わりに元親が戦っていた。
流石炎属性なだけあってこちらまで熱が伝わってくるようだ。見たところ小山田の姿は見えないが何処へ行ったのだろうかと見渡す。
「殿、お疲れ様です」
「あ、こんなところにいたんですね」
道場へ入り左へ曲がると引き戸があり、そこからは鍛錬場なのだが右の引き戸を開けると少々広めの部屋、待機場とでもいうのだろうか。様々な道具が飾ってあるような一室だった。そこから小山田の声が聞こえたので覗いてみれば自分の武器を綺麗に磨いている小山田がいたのだ。
「中に入らないんですか?」
「いやぁ、お2人に熱気には耐えられませんでしたので。」
確かに、と後ろを振り返るとまたゴウゴウと炎が唸っている。そのうち道場が壊れるのではないかと心配するがどうやらここの道場は頑丈なようで信玄と幸村が殴り愛をしてもそうそう壊れることはないのだという。過去に何回か半壊状態にはなったらしいが。
一体どういう作りなのかはさておき、幸村の鍛錬が終わるまでは小山田の手入れをじーっと横で見ていた。
「はぁっ、有難うございました」
「流石若虎だな、負けちまうかと思ったぜ」
へらへらと笑って重そうな錨を担いでいる。あれは常人じゃ持てない。
は様子を伺いながら桶を片手に幸村用と本当は小山田の為に持ってきた手拭いとを持っていくために2人に近づいた。
「幸村さん、長曾我部さん、鍛錬お疲れ様です」
「おう、気が利くじゃねぇか」
どうやら元親はが客人だとまでは気が付かなかったらしい。なので幸村も余計なことは言わずすまぬなと言って手拭いを受け取ってくれた。