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第10章 西海の鬼は悪鬼ですか?



その後佐助もも口を開かなかった。気まずくはなっているのだがここから降りると元親に見つかるだろうと身動きが取れないのだ。
こうやっている間も幸村は追いかけられている様子で元親は幸村を説得してどうにか部屋へ案内させようとしているらしい。幸村はかたくなに拒んでいるのだが。

「佐助ッ!!佐助!!おらぬかァっ!!!」

ついに限界になったのか若干泣きそうな声で佐助を大声で呼ぶ。

「ちょっと待っててね」

佐助は幸村のもとへ向かったのかを一人屋根の上に残して行ってしまった。
それほど不安ではないが、落ちたら骨折するんだろうなとぼーっとしたを眺めた。ちょうどこの位置からは幸村が鍛錬をする裏庭が真下にあるので不安をそれほど煽ることはない。これは佐助の細やかな優しさだろうか。

「困るんだよねーうろうろされたらさー」

「だったら客人1人くらい俺が見たってかまわないだろォ」

いらいらしているのか元親は舌打ちをしている。幸村は疲れ果てているのか声も発していない。

「その客人が気分優れないって言ってるんだから控えてくれないかなぁ?」

そうそう、とは屋根の上で激しくうなずく。
すると元親は高らかに笑ってため息をつくと厳しい声で言った。

「だったら気分の優れねェ客人様は何で屋根の上にいるんだ?」

「っ…!」

気が付かれてた、とは声も出していないのに口を勢いよく手で押さえつけた。
まさか気が付かれるとは思っていなかったのか佐助がため息をついたのが聞こえた。きっと幸村はぴたりと固まっているだろう。

「…明日、会わせろよ」

元親はそう言って宴の席のほうへと戻って行った。
佐助もそれを確認してからを屋根の上から降ろして幸村の前へと降り立った。

「まさかあそこまで鋭いと思わなかったな」

「長曾我部殿とて立派な武人だ、侮っていてはならぬぞ佐助」

「面目ない」

深刻そうな顔をしてはいるが何処か口元は笑っているように見えた。
は疲れてしまったのかぼーっとしているだけだった。


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