第4章 適応能力は低いほうです
「椿、殿に挨拶を」
「はっはい、私、椿と申します、え、ええと、様のお世話をさせて、あ、あの」
歳はいくつだろうか。もしかしたらより幼い女性かもしれない。緊張しているのかまともに自己紹介もできないところがとても可愛らしい。
「…殿、申し訳ありません。椿はまだ最近働き始めたばかりで。」
「大丈夫です、可愛いコですねー」
「かっ、かわ…?!」
顔を真っ赤にして両手をぶんぶんとふっている。このまま現代に連れて帰って娘にしたいとわけのわからないことを考えながらは微笑ましげに眺めていた。
椿はそのまま小山田の付き添いがありながらもの世話をしてくれた。
「あっ申し訳ありません!!」
度々やらかす椿を注意する小山田はまるで兄のようだ。こうしてみればより年上のように思える。
「そんな緊張しないでください、ね?椿ちゃん」
「そそそそんな訳にはいきませんっ」
あわあわしている椿は本当にかわいい。こんなに整った顔をしていて何故女中なのかと思ったのだが、あまり聞いてはいけない過去でも抱えていたら聞いてしまったら申し訳ないし、気まずくはなりたくなかった。
「なんでそんな緊張してるんですか椿ちゃん。」
「そっ…それは…様が……その」
なんだ私のせいかと思っているとそのまま椿は黙ってしまった。その様子を小山田は横目で見ていて笑い出した。
「えっ、なんで小山田さんが笑うんですか」
「椿が緊張しているのは殿がお美しいからです」
「はァ?」
間抜けな声と眉間にしわを寄せた顔が同時に出てしまい、椿を怖がらせてしまった。そのままピシっと固まってしまい顔を真っ青にさせている。
「…椿ちゃーん」
「……」
「ほっといてあげてください」
小山田も苦笑いで椿を見てからに笑いかけた。
ほのぼのしたこの空気は次に登場する人物がぶち壊してしまうのだが。