第16章 放浪も悪くない
夏が終わり、蝉も鳴かなくなってきた頃。
「ちゃんっ迎えに来たよ!」
そう言って訪れて来たのは夏が終わる頃に迎えに来てくれると言っていた慶次だった。
伊達軍兵士も慶次には馴染みがあるようで入って来る際、そんなに警戒した様子はなかったので入ってきたのにほとんどの人は気が付かなかったらしい。
「あっお久しぶりです!」
「もっと砕けて話そうぜー?な?慶次でいいから!」
「は、はぁ…」
どこの軟派男だと思いながら慶次の話し相手をしていると、慶次が来たとようやく聞くつけたのか政宗がこちらに走ってきた。
その顔は何とも言い難、鬼のような形相で恐ろしかった。
「あんま調子乗ってるとブッ放すぞ」
「えぇっ?!ただ話してるだけでかよ!」
慶次は大げさに驚いて両手を上げて降参を意味する姿勢をとる。
「そうだ、迎えに来てくれたんですよね!」
「そうそう、だから砕けていいからね」
「あっ」
つい、と口を抑えると政宗は首をかしげる。
「どういう意味だ?」
「ちゃんって礼儀正しいっていうか硬いっていうか?畏まってる感じがするんだよなぁ」
を見ながら二人はうんうん、と頷く。
慶次は良しとして一国の主である政宗にタメ口で話すわけにはいかないのであはは、と笑ってごまかす。