第15章 恋しい気持ち
「、甲斐に行くのか?」
「あ、いえ…ただちょっと佐助さんの話を聞いてなんとなぁく懐かしく思ってですね」
「帰りたいなら帰りましょう?ね?別にこんな所に留まらずとも良いのですよ?」
さっさと出て行きたいのか椿はそわそわしていた。
それを政宗は嫌そうな顔で見て、に向かい合った。その目は酷く怯える様な子供の目で何かに縋り付いているような感じだった。
「…行くのか」
「…も、もう少しだけここに、いたいです」
その言葉を聞くと政宗は安心したような笑顔を浮かべて椿の方に向き直った。
「お前は帰れ、椿」
「は?私はさんをお守りするために」
「どうやら甲斐の忍を会ってるらしいじゃねぇか、何のためだ」
「疚しい事なんて一つもない、話す義理もない」
ツンとして椿はその場からどこかへ行ってしまった。
「つ、椿ちゃんは多分私の事を佐助さんに教えてるんだと」
「…だろうな、武田のオッサンも心配性みてぇだし」
はたから分かっていたような口ぶりだ。これしきの事を見透かす事はたやすい事なのだろう。にはよくわかっていないが。
「何故余所者の私を大切にしてくれるのかさっぱりで」
すると政宗は驚いたようにをじっとみつめて暫しの沈黙。
遠くで虫の音が聞こえると同時に政宗は盛大に噴出して笑い出した。呼吸困難にでもなるのではないかというくらいの勢いだったのでは驚きすぎて声が出なかった。
「アンタっ、それ…その様子だと自覚がないみたいだな…っ!」
「そんな吹き出さなくたっていいじゃないですか!」
「そりゃ…受け入れられてるんだよ、家族同然だってな」
は開いた口がふさがらなかった。