第5章 神が与えたもの
数多くある“諦めたこと”の一つに、
憲兵団の料理人になる
という夢があった。
とは言っても、試験を受けたことはない。
受ける前から、その難易度に自信喪失し、
それなら兵団の料理人であれば
何でもいい、と思って受けた
調査兵団の料理人の試験に受かって、
今、自分はここに居るのだ。
……だが、
エマは高難度の試験を受けずして、
憲兵団の料理人になることができた。
その上、調査兵団にいる誰もが憧れる
エルヴィンに強く愛され、
愛されることが自然だと思えるくらいの
愛嬌も容姿も持っている。
“天は二物を与えず”
とはよく聞くが、エマを見ていると
それは建前でしかない、と思ってしまう。
それと同時に、
神が二物を与えたくなる程の
目に見えない魅力が、
彼女には備わっていることを強く感じた。