第5章 神が与えたもの
「……ごめん。
あんなに勉強教えて貰ったのに……
一度は断ってみたんだけど、
憲兵団の料理人になる話を断ることが
どういうことなのか分かるのか?
って言われて……」
一度は断った……?
エマは憲兵団の料理人になることを
拒否しようとしたのか……
憲兵団の料理人になることが、
どれだけ名誉なことかは理解しているはずだ。
それを断ってまで
調査兵団の料理人になりたいと思うという事は、
やっぱりそれほどまでに兵長との約束を
大切に思っているということだろう。
「……アン、怒ってる?」
「いや!ごめん、
ちょっと考え事してただけ!」
不意に顔を覗き込まれ、
すぐに声を張って答える。
「でも、憲兵団の料理人なんて、
そうそうなれるもんじゃないからね?
ここは喜ぶべきだよ。おめでとう。」
不安気な表情を浮かべるエマを
安心させるように、
明るいトーンで話しかける。