第36章 人事を尽くして天命を待つ。
るり「それってどんな味だったっけ…。もう忘れちゃった。」
私がそう呟くと、
緑間くんは私にいちご味のおしるこを差し出した。
緑間「…恋の味…なのだよ。」
その時何かを呟いたが
聞き取れず聞き返したが、緑間くんは黙り込むだけだった。
私は受け取り、一口だけ飲ませてもらった。
るり「懐かしい!この味!」
私が缶を返すと、
緑間くんは再びいちご味のおしるこを口に運んだ。
緑間「俺には中学の時から好きな奴がいるのだよ。」
るり「…?」
緑間「彼女を見つけたのは中学1年の時だった。体育館で夜遅くまでずっと一人で練習していて…昼休みだって、図書室でずっとバスケの本を読んでいて…」
緑間くんは壁にもたれかかり、
いちご味のおしるこの缶を見つめる。
緑間「コートに出た時は長くてキレイな髪をなびかせて…何故かいつだって目が離せなかった。気がつけば彼女を見つけるたびに目で追ってしまっていたのだよ。」
るり「…。」
緑間「でも、いつしか彼女は学校に来なくなってしまったのだよ。輝いていた毎日が錆びていった。噂で事故にあって入院していると聞いて…でも、どうも出来ない自分がじれったくて…」
緑間くんの長いまつげが
まばたきするたびに揺れていて…
そのキレイな横顔を
私はじっと眺めていた。