好きだと気づくには、遅すぎた 【ヒロアカ 轟vs爆豪】
第1章 誰にも言えない秘密
その日A組を襲ったのは、文字通り全身の関節が悲鳴を上げるレベルの凄まじい戦闘訓練だった。
夕食もそこそこに這うようにして浴場へ向かった生徒たちは、湯船に浸かった瞬間から意識が半分飛んでいる状態で、各自最低限の汚れを洗い流すと、まるで電池が切れたロボットのように次々と自分の部屋へ吸い込まれていき、寮内は早々に静まり返っていた。
轟もまた長めに湯に浸かって強張った筋肉をほぐしたものの、頭の中はぽやぽやと温かい霧がかかったような状態だった。
濡れた髪を軽くタオルで拭き、緩い部屋着で廊下を歩いて部屋へ戻ろうとしていたその時——
「わっ……!?」
消灯時間ギリギリにバタバタと廊下を駆けてくる気配と同時に、着替えとタオルを抱えたが曲がり角から飛び出してきた。
疲労で足元がおぼつかなかったのか、バランスを崩し盛大に前へ倒れ込む。
「——おっと」
反射神経だけで体が動いた轟はとっさに手を伸ばし、彼女の体が床へ激突する直前で横からしっかりと抱き留めた。
「……ん?」
彼女を抱く掌から伝わる、吸い付くような柔らかさと温もり。
自分の伸ばした手が、ちょうど彼女の胸をしっかりと鷲掴みにしていることに気づかず、確かめるように無意識にモミモミと手を動かしてしまう。
「……っん♡……あんっ♡……!?」
すると、の口から聴いたこともないような甘い声が漏れた。
彼女は湯気が出そうなほど顔を赤くさせると震える足で立ち上がる。
「た、たすけてくれて……ありがと……!」
パニック状態でそれだけ捲し立てると、彼女は弾かれたように浴場へと駆け去っていった。
取り残された轟はすっかり静まり返ったリビングへ移動し、ソファーに深く腰を下ろした。
視線を落とし右手をゆっくり開くとまた軽く握り直す。
掌にはまだ、先ほどの信じられないほど柔らかい感触と、微かな熱がはっきりと残っていた。