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脹相と恋愛〜大人〜

第3章 バックハグからの首にキス


「……ずっと、我慢していた」

「え?」

「お前と付き合えて嬉しいのに、こうして一緒にいると……触れたくなる」

 思いがけない言葉に、胸が跳ねた。

「でも、急に距離を詰めたら嫌がるかと思っていた」

「……嫌じゃないよ」

 そう答えた瞬間。

 背後で、小さな息が漏れた。

「……そういうことを、今言うな」

「どうして?」

「余裕がなくなる」

 その声があまりにも正直で、思わず振り返ろうとする。

 けれど、腰を抱く腕に力がこもって、止められた。

「今は、こっちを向かないでくれ」

「……脹相?」

「顔を見たら、本当に自信がなくなる」

 いつもの落ち着いた彼からは想像できない言葉だった。

 胸が熱くなる。

 すると、首元にそっと唇が触れた。

 ほんの一度。

 それだけで終わるはずだった。

 けれど、離れたあとも彼の吐息が肌に残っている。

「……あの…もう一回」

 思わず呟く。

 背後で脹相が息を止めた。

「……お前は」

 掠れた声。

「本当に、俺を困らせるな」

 それでも拒むことはなく、もう一度首筋へ唇を寄せる。

 今度は少しだけ長く。

 抱きしめる腕も、さっきより強い。

 けれど乱暴ではなく、どこか必死だった。

 まるで大切にしたい気持ちと、もっと近づきたい気持ちの間で揺れているようだった。

「……脹相」

「……なんだ」

「テレビ、全然見てないでしょ」

 そう言うと、しばらく沈黙があった。

「……見ていない」

「やっぱり」

「お前のせいだ」

 耳元でそう囁かれて、思わず笑う。

 すると脹相は、少しだけ顔を伏せた。

「……笑うな」

「だって」

「俺は本気で困っている」

 そう言いながら、首元にもう一度、そっとキスを落とす。

 今度はそのまま離れず、額を肩に預けて深く息を吐いた。

「……もう少しだけ、こうさせてくれ」

「うん」

 答えると、腕の力が緩やかに強まった。

 テレビの内容は、もう二人ともほとんど覚えていない。

 ただ背中越しに伝わる体温と、耳元で少し乱れた呼吸だけが、妙に鮮明だった。
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