第4章 朝のハグ
付き合い始めてから、まだそれほど日は経っていなかった。
けれど脹相にとっては、それだけの時間でも十分すぎるほど、大きな変化だった。
今までなら、一人で眠ることに何の疑問も持たなかった。
夜になれば自分の部屋へ戻り、静かな時間を過ごす。
それが当たり前だった。
――なのに。
朝早く目を覚ました脹相は、しばらく天井を見つめたあと、静かに起き上がった。
「……会いたい」
口にしてから、自分で驚く。
昨日も会っている。
寝る前にも顔を見た。
それなのに、目覚めて最初に浮かんだのは彼女の顔だった。
脹相は小さく息を吐き、彼女の部屋へ向かった。
扉を開ける。
まだ眠っている。
薄暗い部屋の中で、布団に包まれている姿を見つめるだけで、胸の奥が静かに満たされていく。
「……顔を見るだけのつもりだったんだがな」
ベッドのそばに腰を下ろす。
起こしたくはない。
けれど、離れるのも惜しい。
そんな矛盾した気持ちを抱えていると、彼女が小さく身じろぎした。
「……ん……」
「……」
ゆっくりと瞼が開く。
「……脹相?」
「起こしたか」
「ううん……どうしたの?」
「……顔を見たかった」
眠そうな彼女が、少しだけ笑う。
「こんな朝早く?」
「ああ」
少し迷ったあと、彼女が布団の端を持ち上げた。
「……入る?」
「いいのか」
「うん」
脹相は静かに布団へ入った。
最初は肩が触れる程度だった。
近い。
それだけでも十分に彼女の体温を感じられる。
けれど、脹相は少しだけ迷った。
視線を落とす。
自分の腕を見る。
今までなら、ここで終わっていた。
だが今日は違った。