第2章 初めてのハグ
「……顔が赤いぞ」
「脹相のせい」
「俺のせいか」
「そう」
小さく笑う。
すると脹相も、ほんのわずかに口元を緩めた。
もう一度、身体を抱き寄せられる。
今度はさっきよりもゆっくりと。
肩口に彼の顎が触れ、耳元で低い声が響く。
「……こういうのも、恋人なら普通なのか」
「たぶん」
「そうか」
少し考えるような間。
「なら、覚えておく」
「何を?」
「お前が安心する抱き方を」
胸の奥が、じんと熱くなった。
色気のある言葉を囁かれたわけでもない。
何か特別なことをされたわけでもない。
それなのに、これまでで一番近くにいるような気がした。
「……脹相」
「なんだ」
「好き」
今度は迷わず言えた。
腕の力が、ほんの少しだけ強くなる。
「……俺もだ」
静かな返事。
けれど、その声には隠しきれないほどの優しさが滲んでいた。
その夜、初めてのハグは思っていたより長く続いた。
離れる理由なんて、二人とも見つけられなかった。