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脹相と恋愛〜大人〜

第2章 初めてのハグ



「……緊張してる?」

「していない」

「ほんと?」

「ああ」

 そう答えながら、背中に回された腕には少しだけ力がこもる。

 思わず笑ってしまった。

「脹相も緊張してるじゃん」

「……お前がそんなことを言うからだ」

「私のせい?」

「そうだ」

 いつもより低い声だった。

 その声が耳元に落ちて、背筋が小さく震える。

 脹相はそれに気づいたのか、ほんの少しだけ身体を離した。

「嫌だったか」

「違う」

 慌てて彼の服を掴む。

「……もっと、このままがいい」

 言った途端、彼の表情が変わった。

 普段の無愛想さの奥に隠れていたものが、一瞬だけ覗く。

 愛おしそうで、少し困ったような。

 そんな目だった。

「……そういうことを、簡単に言うな」

「どうして?」

「歯止めが利かなくなる」

 胸が跳ねた。

 脹相は自分でも言い過ぎたと思ったのか、目を逸らす。

 その横顔が妙に色っぽく見えてしまって、今度はこちらから彼の服を少し強く握った。

「……じゃあ、離れる?」

「それは嫌だ」

 即答だった。

 思わず顔を上げる。

 視線がぶつかる。

 近い。

 息が触れそうなほど近い距離で、脹相が静かにこちらを見つめている。

「お前とこうしているのは……嫌ではない」

「うん」

「むしろ、ずっとこうしていたい」

 そう言って、彼の指がそっと髪に触れた。

 梳くように一度だけ撫でられる。

 それだけなのに、心臓が落ち着かない。
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