第2章 初めてのハグ
付き合うことになった、その日の夜。
いつもと同じ部屋なのに、どうしてこんなにも落ち着かないのだろう。
ソファに座っている脹相との距離は、ほんの少し。手を伸ばせば届く程度なのに、今日はその数十センチが妙に遠く感じた。
「……さっきから、何をそんなに緊張している」
「だって……」
言葉に詰まる。
付き合うことになった。
それだけなのに、今までとは何もかもが違って見える。
隣にいる脹相の横顔も、低く落ち着いた声も、こちらを見る赤い瞳も。
「……ハグ、したい」
思い切ってそう告げると、脹相がわずかに目を見開いた。
「ハグ?」
「うん。……付き合ってから、初めてだから」
そう言うと、彼はしばらく黙った。
やがて小さく息を吐き、少しだけ腕を広げる。
「来い」
たった二文字なのに、胸が大きく鳴った。
そっと近づいて、その胸元に身体を預ける。
次の瞬間、背中に腕が回った。
「……っ」
思っていたより、ずっと強い。
けれど苦しいわけではない。
まるで逃がさないように、それでいて壊さないように、大切に抱きしめられている。
耳を澄ませば、すぐ近くで脹相の鼓動が聞こえた。