第20章 次の一歩※
「本当にいいのか?」
「うん。いいよ」
「……」
「……脹相?」
呼びかけても、彼はすぐには答えなかった。
ただ、こちらを見つめている。
やがて伸びてきた指先が、頬から首筋へとゆっくり下りてくる。
そして、鎖骨のあたりで止まった。
「ここ、触ってもいいか」
確認されて、少しだけ驚く。
「……うん」
許すと、脹相の指がそっと鎖骨をなぞった。
力はほとんどない。
ただ輪郭を確かめるように、ゆっくりと。
「……くすぐったい」
「そうか」
それでも指は急がない。
鎖骨の端から中央へ。
一度なぞって、また戻る。
そのたびに、触れられている場所だけが妙に意識される。
「脹相」
「何だ」
「なんでそんなに丁寧なの?」
脹相は少し考えるように黙った。
「……大事に触れたいからだ」
あまりにも真っ直ぐな答えに、胸が跳ねる。
脹相はそんなこちらの反応に気づいたのか、指を止めた。
「嫌なら、やめる」
「嫌じゃない」
「だけど」
そう答えると、彼は安心したように目を細める。
それからもう一度、鎖骨をゆっくり撫でた。
「……なら、もう少しだけ」
低く穏やかな声。
その手つきも同じくらい優しい。
触れられるだけなのに、いつもより近くにいるような気がした。