第19章 ※特別なキスにハマった
「どうして?」
「……俺にも我慢の限界がある」
低い声だった。
彼女は意味が分からないというように首を傾げる。
「キスするだけなのに?」
「お前にとっては、そうかもしれない」
脹相は彼女から少し距離を取る。
「だが俺は、そう簡単に割り切れない」
「……嫌なの?」
「違う」
すぐに否定する。
「嫌なら、こんなに困っていない」
そう言って、脹相は赤くなった顔を隠すように視線を逸らした。
「お前が嬉しそうにねだるから、何度でも応えてやりたくなる」
「じゃあ……」
「だから駄目なんだ」
彼女がまた近づこうとする。
脹相は慌てて、その肩をそっと押し返した。
「待て」
「……?」
「今それ以上近づいたら、本当に自制できなくなるかもしれない」
その言葉に、彼女もようやく黙った。
しばらくして――
「……じゃあ、夜しよ?」
「っ」
「布団の中で」
「お前…」
「もう一歩…教えて?」
「…………」
脹相は答えなかった。
彼女がくすくす笑う。
「脹相、困ってる」
「誰のせいだと思っている」
「私?」
「ああ」
そう言いながらも、脹相の手は彼女の髪を優しく撫でている。
拒みたいわけではない。
むしろ逆だ。
だからこそ、今は耐える。
「……夜になったら考える」
「ほんと?」
「約束する」
「じゃあ、楽しみにしてる」
嬉しそうに笑う彼女を見て、脹相はまた小さくため息をついた。
――ちゃんと自制できるだろうか。
そんな不安を抱えながら。