第19章 ※特別なキスにハマった
一度、知ってしまったのがいけなかった。
ほんの少し、いつもと違うキス。
それだけだったのに。
「……脹相」
隣に座っていた彼女が、甘えるように名前を呼ぶ。
脹相は嫌な予感がして、ゆっくり振り向いた。
「何だ」
「もう一回して」
「……またか」
「うん」
迷いのない返事だった。
脹相は小さく息を吐く。
「さっきしただろう」
「でも、もう一回したい」
「…………」
その顔を見てしまうと、強く断れない。
結局、彼女の頬に手を添えて、唇を重ねる。
短く触れるだけ。
それじゃ足りないとせがまれる。
それが可愛くて仕方がない。
けれど彼女はいくらしても離れた途端に少し寂しそうな顔をする。
「……もう終わり?」
「終わりだ」
「もう一回」
「お前は……」
脹相は額に手を当てた。
困っている。
本当に困っている。
彼女が悪いわけではない。
ただ、彼女が嬉しそうに「もう一回」と言うたびに、断るための理性が少しずつ削られていく。
「脹相」
「何だ」
「お願い」
その一言に、脹相は目を閉じた。
「……一回だけだぞ」
「うん」
また唇が触れる。
今度はさっきより長い。
舌が触れ合い、熱い息遣いが絡む。
離れたあと、彼女は満足そうに笑った。
「やっぱり好き」
「……そうか」
「もう一回してもいい?」
「駄目だ」
今度は即答だった。
彼女が目を丸くする。