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脹相と恋愛〜大人〜

第16章 キスのやめ方が分からない


気づけば、何度目のキスなのか分からなくなっていた。

 最初は、ほんの軽い口づけだったはずなのに。

 一度離れては、また目が合って。

 そのたびに、どちらからともなく近づいてしまう。

「……ん」

 ようやく唇が離れた。

 けれど、ほんの数センチしか距離はない。

 息が触れそうなほど近くで、脹相が私を見つめている。

「……」

「……どうしたの?」

 尋ねても、脹相はすぐには答えなかった。

 ただ、少し困ったように眉を寄せている。

「……すまない」

「何が?」

「止め時が分からなくなった」

「……ふふ」

「笑うな」

「だって……」

 私はまだ熱の残る唇を指先でそっと触れた。

「食べられちゃうのかと思った」

「……」

 脹相が固まる。

「脹相?」

「……それは」

 耳まで赤くなっている。

「俺も、少しそう思った」

「え?」

「お前が可愛くて、もう一度と思っているうちに……何度もしてしまった」

 そう言って、脹相は目を伏せる。

「まるで、食べるようになっていたな」

「やっぱり」

「……だが」

 脹相がそっと私の頬に触れる。

「嫌だったか?」

「ううん」

 私は首を横に振る。

「むしろ……嬉しかった」

「……そうか」

 脹相の表情が柔らかくなる。

 私は恥ずかしさをごまかすように、唇を舐めてしまった。

「…………」

 脹相の視線が止まる。

「……脹相?」

「今のは、やめてくれ」

「え?」

「さっきまで何度もキスしていたせいで、余計に意識してしまう」

「……ごめん」

「謝らなくていい」

 そう言いながら、脹相は顔を逸らす。

「ただ、今は少し落ち着く時間が必要だ」

「そんなに?」

「ああ」

 少し間を置いて、脹相が苦笑する。

「お前を見ていると、またキスしたくなるからな」

 私は一気に顔が熱くなった。

「……それ、ずるい」

「何がだ?」

「そんなこと言われたら、私もまたしたくなる」

「……」

 今度は脹相が完全に黙り込んだ。

「脹相?」

「……やはり、お前には敵わないな」

 そう呟いて、脹相は私をそっと抱き寄せた。

 今度はキスをせず、ただ額を寄せ合う。

「少しだけ、こうしていよう」

「うん」

 静かな部屋に、二人の鼓動だけが響いていた。
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