第13章 キスしたのは夢か現実か
朝。
カーテンの隙間から差し込む光で、脹相はゆっくりと目を覚ました。
「……」
最初に感じたのは、すぐ隣にある温もりだった。
昨夜と同じ布団。
そして、隣には私が眠っている。
脹相はぼんやりとこちらを見た。
その瞬間、昨夜の夢が鮮明に蘇る。
夢の中でも、私は隣にいた。
そして――何度もキスをしていた。
頬に。
額に。
そして唇にも。
「…………」
脹相が固まる。
「……待て」
小さく呟いて、自分の唇に触れる。
「俺は……夢の中で……」
あまりにも鮮明だった。
夢だったはずなのに、感触まで残っているような気がする。
脹相は恐る恐る隣を見る。
私は何事もなかったように眠っている。
「……」
もし。
もし本当に夢の中だけではなく、現実でもしていたら?
「……いや、そんなはずはない」
そう思う。
けれど、確信が持てない。
「……本当にしていないのか?」
脹相は完全に疑心暗鬼になっていた。
私の寝顔を見る。
何も変わっていない。
「……」
もう一度、自分の唇に触れる。
「……分からない」
頭を抱えた、そのとき。
「……脹相?」
「!」
突然声をかけられて、脹相が飛び上がる。
「起きたのか」
「うん……」
私は眠そうに目を擦る。
すると、脹相の顔が一気に赤くなった。
「……どうしたの?」
「いや」
「顔赤いよ」
「少し暑い」
「朝なのに?」
「……そうだな」
明らかに様子がおかしい。
「何かあった?」
「……夢を見た」
「夢?」
「ああ」
脹相は少し迷ってから話し始める。
「お前と……キスをする夢だった」
「……」
「それも、何度も」
「ふふ」
「笑うな」
「ごめん」
「それで……目が覚めたら、お前がすぐ隣にいた」
「うん」
「だから……」
脹相が困ったように眉を寄せる。
「俺が、本当にお前にキスしたのか分からなくなった」
「……」
私は少し考える。
「たぶん、してないよ」
「……本当か?」
「うん」
「……よかった」
脹相が心底安心したように息を吐く。
けれど私は、その顔を見て少し笑った。