• テキストサイズ

脹相と恋愛〜大人〜

第12章 初めてのお布団


付き合い始めてから、初めて二人で迎える夜だった。

 寝室の灯りを落とす。

 いつもなら、それぞれの布団に入って「おやすみ」と言えば終わる時間。

 けれど今日は違った。

 同じ布団の中に、脹相がいる。

「……なんだか、変な感じ」

 小さく呟くと、隣から低い声が返ってきた。

「ああ」

「今までだって、すぐ近くで寝てたのにね」

「付き合う前と後では、意味が違うからな」

「……そうだね」

 暗闇の中で、視線が重なる。

 近い。

 思っていた以上に。

 脹相が手を伸ばし、私の髪に触れる。

「……緊張しているか?」

「少し」

「俺もだ」

 そう言って、脹相の指が頬をそっと撫でる。

 優しい触れ方なのに、それだけで心臓が速くなる。

「そんな顔をされると、余計に緊張する」

「どんな顔?」

「……可愛い顔だ」

「もう」

 恥ずかしくなって目を逸らす。

 すると脹相が小さく笑った。

「前は、こうして触れたいと思っても我慢していた」

「今は?」

「今は……」

 脹相が少しだけ距離を縮める。

「触れてもいいと思えるのが、嬉しい」

 額が触れそうな距離。

 息が近い。

「……抱きしめてもいいか?」

「うん」

 腕の中へ引き寄せられる。

 いつものハグより、少しだけ長い。

 背中に回った手が、ゆっくりと撫でる。

「……落ち着く」

「本当か?」

「うん」

 私は脹相の胸元に頬を寄せた。

 鼓動が、先ほどよりはっきり聞こえる。

「脹相の方が緊張してる」

「……否定できないな」

「ふふ」

「笑うな」

「だって意外」

「俺だって、お前がこんなに近いと平静ではいられない」

 その言葉に、今度は私が黙ってしまう。

 脹相の手が止まる。

「……嫌だったか?」

「違う」

「なら、よかった」

 少し間を置いて、脹相が額に口づける。

 次に頬へ。

 いつものキスなのに、今夜は妙に意識してしまう。

「……今日は、いつもより多い」

「そうか?」

「うん」

「付き合ったばかりだからな」

「関係ある?」

「ああ」

 脹相は迷いなく答えた。

「恋人になった実感が、まだ足りない」

「……じゃあ、どうしたら実感する?」

 何気なく尋ねたつもりだった。

 けれど、脹相が黙る。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp