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脹相と恋愛〜大人〜

第11章 キスマーク


夜、二人でソファに並んでいたときだった。

 脹相が珍しく、何か言いたそうにこちらを見ていた。

「……〇〇」

「ん?」

「一つ、聞いていいか」

「うん」

 脹相は少し迷ってから、静かに口を開いた。

「……キスマークを、つけてもいいか?」

「え……」

 思わず瞬きをする。

 脹相の顔も、少し赤い。

「嫌なら断ってくれ」

「嫌ってわけじゃないけど……」

 私は少し考えた。

 首だと学校や外出のときに困る。

 だから、見えないところなら。

「首はダメ」

「ああ」

「でも……見えない胸元ならいいよ」

 脹相が固まった。

「……胸元?」

「うん」

 脹相の顔が、みるみる赤くなっていく。

「脹相?」

「いや……」

 片手で口元を覆う。

「……そうか」

「?」

「……胸元、か」

「うん」

「……」

 なぜかものすごく困っている。

「駄目だった?」

「いや、そうではない」

「じゃあ……」

「少し、待ってくれ」

「どうして?」

「今の言葉を処理している」

「言葉を?」

「ああ」

 脹相は深く息を吐く。

「お前は……その」

「なに?」

「本当に、そういう意味で言ったのか?」

「……?」

 そこで私はようやく、自分の言い方を思い返した。

「……あ」

 急に顔が熱くなる。

「ち、違う!」

「……?」

「そういう意味じゃない!」

「どういう意味だ?」

「胸元って……鎖骨の下!」

 慌てて自分の鎖骨のあたりを指差す。

「ここ! 服で隠れるところ!」

「…………」

 脹相が止まった。

 そして。

「……そういうことか」

「そうだよ!」

「……」

「私、変な言い方した!?」

「いや……」

 脹相が目を逸らす。

「俺も勝手に考えすぎた」

「……」

「すまない」

「脹相も勘違いしたんだ……」

「お前の言い方が悪いとは思っていない」

「でも今、私もめちゃくちゃ恥ずかしい」

「……俺もだ」

 二人して黙り込む。

 さっきまで普通に話していたのに、急に気まずい。

 私は顔を手で覆った。

「……もうやだ」

「なぜだ」

「だって、脹相が変な顔するから」

「俺はお前の言葉に驚いただけだ」

「顔真っ赤だったよ」

「……お前もだ」

「……」

 言い返せない。
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