• テキストサイズ

脹相と恋愛〜大人〜

第10章 耳へのキス


「……もう一度だけ」

「……」

「駄目なら言ってくれ」

 私は小さく頷く。

 脹相がゆっくり近づいてくる。

 耳元に、また小さな音。

 ちゅ。

「……ぁっ」

 思わず目を閉じる。

 恥ずかしくて、肩をピクンとすくめる。

 その瞬間、脹相がぴたりと止まった。

「……もうやめる」

「え?」

「今の顔は駄目だ」

「どうして?」

「限界そうだった」

「……ん、でも少し恥ずかしかっただけ」

「それでもだ」

 脹相はそう言って、耳から離れる。

 けれど、その表情もまた限界に近かった。

「……俺も、かなり我慢している」

「脹相も?」

「ああ」

 そう言って、代わりに頭を優しく撫でる。

「本当は、もっとしたい」

「……」

「だが、お前が恥ずかしいなら止める」

 その言葉に胸が温かくなる。

「……ありがとう」

「礼を言われることではない」

 そう言いながら、脹相は最後に額へキスをした。

 耳ではなく。

 音がほとんど聞こえないくらい優しく。

「……これなら大丈夫だろう?」

「うん」

 脹相は少し安心したように笑う。

 けれど、その直後。

「……ただ」

「うん?」

「次にお前が『もう少しならいい』なんて言ったら……」

 そこで言葉を止める。

「……俺は、本当に自信がない」

 耳まで赤くしながらそう言う脹相を見て、私は思わず笑ってしまった。

 どうやら限界だったのは、私だけではなかったらしい。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp