第1章 告白
「……何だか、変な感じ」
そう呟くと、脹相がこちらを見る。
「何がだ?」
「同じことをしてるのに、意味が違う気がする」
脹相は少し黙ってから、繋いだ手を見つめた。
「……俺もだ」
「前から手を繋いでたのに?」
「ああ」
脹相の親指が、私の手の甲をそっと撫でる。
「前は、これだけで十分だと思おうとしていた」
「……」
「今は違う」
低い声。
「お前が俺の恋人だと分かった上で、こうしている」
その言葉に、胸が高鳴る。
「だから……嬉しい」
握る手に、ほんの少しだけ力が込もる。
「すごく」
それから脹相は、空いている手をこちらへ伸ばした。
「……頭も撫でていいか?」
思わず吹き出す。
「それも今さらじゃない?」
「分かっている」
「じゃあ、なんで聞くの?」
脹相は少し考えてから答えた。
「今までと同じことをしてもいいのか、確かめたかった」
「もちろん」
そう答えると、脹相の手が髪に触れた。
ゆっくりと撫でる。
いつもと同じ、優しい手つき。
何度もしてもらったことのある仕草。
なのに、今日は胸がざわついた。
「……どうした?」
「なんか、ドキドキする」
「俺もだ」
意外な答えに顔を上げる。
「脹相も?」
「ああ」
彼は少し照れたように目を逸らした。
「今までなら、頭を撫でるだけで我慢できた」
「……今は?」
問いかけると、脹相は黙る。
そして、ゆっくりこちらを見る。
「今は……もっと近くにいたいと思う」
その言葉に、心臓が大きく鳴る。
けれど脹相は、急がない。
ただ繋いだ手を大切そうに握ったまま、もう一度髪を撫でる。
「だが、焦るつもりはない」
「うん」
「長い間待ったからな」
静かな声。
「これからは、ゆっくりでいい」
その言葉が、胸に深く残った。
長い片思いの間。
何度も触れた手。
何度も撫でてもらった髪。
隣で眠った夜も、何気なく笑い合った時間も。
脹相にとっては、そのすべてが「好き」という気持ちを隠しながら大切にしてきた時間だった。
そして今。
同じ手を繋いでいる。
同じように頭を撫でてもらっている。
なのに、それらすべてに新しい意味が生まれている。