第7章 口へのキスは我慢が効かなくなる
「……後悔するなよ」
「しないよ」
静かに距離が縮まる。
唇が触れる。
短いキス。
離れる。
――それで終わり。
そう思った瞬間、脹相がもう一度近づいてきた。
今度は少しだけ長く。
離れたあと、額をこちらに寄せる。
「……やはり」
「うん?」
「もう一度したい」
「ふふ」
「笑うな」
「だって、前と同じ」
「……そうだな」
脹相は小さく息を吐く。
「やはり、俺には難しいらしい」
「じゃあ、もう一回だけ」
「……一回だけ?」
「うん」
脹相が少しだけ笑う。
「それは、俺が一番信用できない言葉だ」
「どうして?」
「前もそう言って、何度もしたからだ」
そう言いながらも、彼は離れなかった。
むしろ、そっと抱き寄せてくる。
「……でも」
耳元で囁く。
「今度は、ちゃんとお前と一緒に止まる」
その言葉に、思わず頷いた。
唇へのキスは、やっぱり特別だった。
だからこそ脹相は慎重で、何度も確かめるようにこちらを見る。
そして、もう一度だけ。
今度は二人で笑いながら、短いキスを交わした。
離れた脹相は、少し名残惜しそうな顔をしていた。
「……やっぱり、難しいな」
「何が?」
「お前から離れることだ」
そう言って、今度はいつものように額へキスを落とす。
けれどその顔は、以前よりずっと幸せそうだった。