第7章 口へのキスは我慢が効かなくなる
だから今夜も、頬にキスをされたところで尋ねてみた。
「ねえ、脹相」
「なんだ」
「口にはキスしないの?」
「……」
脹相が固まる。
「前にしたよね」
「ああ」
「でも、それからしなくなったから」
「……理由は分かっているだろう」
「ちゃんと聞いてない」
脹相はしばらく黙っていた。
やがて、観念したように息を吐く。
「……あのとき、一度で終わらなかったからだ」
「うん」
「一度触れたら、もう一度したくなった」
脹相の視線がこちらの唇へ落ちる。
すぐに逸らされた。
「一度だけならいいと思っていた」
「でも?」
「離れたあと、お前の顔を見たら……また触れたくなった」
静かな声。
「だから、もう一度した」
「うん」
「それでも足りなかった」
その言葉に、胸が少し高鳴る。
「気づけば何度もしていた」
脹相は恥ずかしそうに眉を寄せる。
「止めようと思っても、あと一度だけと思ってしまう」
「……そんなに?」
「ああ」
迷いのない返事だった。
「だから、避けていた」
「私が嫌だったからじゃない?」
「違う」
脹相はすぐに否定した。
「むしろ逆だ」
こちらを真っ直ぐ見る。
「嫌ではなかったから、怖かった」
「……怖い?」
「お前が嫌がっていないと分かるほど、俺は自制できなくなる気がする」
その言葉の真剣さに、胸が温かくなる。
「だから、頬なら一度で終われる」
そう言って、頬にそっとキスをする。
「額も」
額へ。
「髪も」
頭を撫でながら、髪へ。
「だが……口は」
そこで言葉を止める。
「一度で終われる自信がない」
思わず笑ってしまう。
「じゃあ、今もしたら止まれなくなる?」
「……たぶん」
「たぶん?」
「いや」
脹相が少し困った顔をする。
「かなり」
その答えに、思わず笑みがこぼれる。
「じゃあ、私が止めるから」
「……」
「してみる?」
脹相はしばらくこちらを見つめていた。
そして、ゆっくりと頬へ手を添える。