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脹相と恋愛〜大人〜

第7章 口へのキスは我慢が効かなくなる


付き合い始めてから、脹相はよくキスをするようになった。

 朝なら髪に。
 出かける前なら額に。
 帰ってきたら頬に。

 何か嬉しいことがあれば、頭を撫でながら髪に口づける。

 けれど、不思議なことが一つだけあった。

 唇には、ほとんどしてこない。

 正確には――以前、一度だけ。

 付き合うことになったばかりの頃、互いに少し緊張しながら唇を重ねたことがある。

 ただ、一度だけでは終わらなかった。

 最初は、本当に短いキスだった。

 触れて、離れる。

 それだけのつもりだった。

 けれど、離れたあとに目が合って。

 脹相がもう一度、そっと顔を近づけてきた。

 二度目。

 そして、三度目。

 気づけば、何度も唇を重ねていた。

 どれも決して乱暴ではなかった。

 むしろ一つ一つは優しく、慎重だった。

 けれど、終わりが来なかった。

 脹相自身が「もう一度」と思ってしまうたび、また唇が触れる。

 そして最後には、彼が苦しそうに息を吐いて、自分から離れた。

「……今日は、もうやめよう」

 そのときの表情が、今でも忘れられない。

 顔は赤く、呼吸も少し乱れていた。

「どうしたの?」

「……止まれなくなりそうだった」

 それ以来だった。
 脹相が唇へのキスを避けるようになったのは。

 
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