第6章 初めてのキス
もう一度、唇が重なる。
今度はさっきより長い。
触れているだけなのに、心臓がうるさい。
どこに手を置けばいいのか分からなくなって、私は彼の服をそっと掴んだ。
すると脹相の腕が私の背中へ回る。
抱き寄せられた瞬間、二人の距離がほとんどなくなった。
「……っ」
思わず息が漏れる。
その瞬間、脹相がわずかに離れた。
「今のは……」
「違うの」
慌てて顔を上げる。
「嫌じゃなくて……ドキドキしただけ」
脹相は黙った。
それから、少しだけ困ったように笑う。
「……俺もだ」
その一言に、余計に恥ずかしくなる。
けれど次に触れたキスは、今までで一番ゆっくりだった。
触れて、離れて。
また触れて。
そのたびに胸が跳ねる。
離れたと思ったら、額が触れ合うほど近くに戻ってくる。
「……もう、顔を見られない」
私が呟くと、脹相の親指が頬を撫でた。
「俺は見たい」
「恥ずかしいよ……」
「俺も恥ずかしい」
「全然そう見えない」
「なら、よく見ていろ」
そう言って、脹相は少し照れたように目を逸らした。
その姿がおかしくて笑うと、彼も小さく笑った。
そして――また唇が重なる。
今度は、さっきより自然だった。
長いキスの合間に何度か目を開ける。
そのたびに、すぐ近くにある脹相の瞳と目が合う。
そのたびに、胸がどうしようもなく騒いだ。
唇が離れたあとも、脹相は私を抱いたまま動かない。
「……これ以上すると、本当に止められなくなりそうだ」
耳元で囁かれて、思わず顔を上げる。
「……止めたいの?」
「違う」
即答だった。
その真っ直ぐさに、胸が熱くなる。
脹相は少しだけ息を整えてから、私の額に自分の額を重ねた。
「ただ、お前を大切にしたい」
そして、ほんの少し笑う。
「だから今日は、このくらいで我慢する」
そう言ったくせに。
最後にもう一度だけ――とでも言うように、脹相は優しく唇を重ねた。
そのキスは、今までで一番長くて。
離れたあとも、しばらく二人とも何も言えなかった。
ただ近い距離で見つめ合いながら、同じくらい速い鼓動を感じていた。