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脹相と恋愛〜大人〜

第6章 初めてのキス


「……大事にしたい」

そう言った脹相の腕が、少しだけ強くなる。

以前までなら、そこで離れていたはずだった。

けれど今夜は違った。

「……でも」

低い声が耳元に落ちる。

「俺ばかり我慢するのも、もう限界かもしれない」

「脹相……?」

顔を上げると、すぐ目の前に彼がいた。

近い。

思わず後ろへ下がろうとすると、その動きを追うように脹相も一歩近づく。

逃げ道を塞ぐような強引さはない。
ただ、こちらが嫌がっていないことを確かめるように、ゆっくりと距離を詰めてくる。

「嫌なら言ってくれ」

「……嫌じゃない」

その答えを聞いた瞬間、脹相の表情がほんの少し緩んだ。

そして、頬に触れていた手が髪へ移る。

指を絡めるように撫でられて、背中がぞくりとした。

「……もっと近くにいてもいいか」

「うん」

今度は迷わなかった。

脹相の腕が腰に回る。

ぎゅっと抱き寄せられて、胸元に顔が触れるほど近くなる。

いつもなら感じない彼の体温や呼吸まで、はっきり伝わってくる。

「……お前は、本当に無防備だな」

「脹相が優しいから」

「……それは、困るな」

「どうして?」

少し顔を上げると、脹相がこちらを見下ろしていた。

その目が、いつもの優しさとは少し違って見える。

「優しくしていれば、いつまでも触れずにいられると思っていた」

そう言って、親指で頬をゆっくり撫でる。

「だが……お前がこんなに近くにいると、もっと触れたくなる」

心臓が跳ねた。

脹相はそんなこちらの反応を見て、ほんの少しだけ笑う。

「……怖いか?」

「ううん」

「そうか」

今度は、離れない。

額を寄せたまま、互いの呼吸が混ざる距離で囁く。

「なら、今日は少しだけ……俺のわがままを聞いてくれ」

その声があまりにも優しくて。

それなのに、抱きしめる腕だけは今までよりずっと強くて。

――初めて、いつもの「優しい脹相」が、男として自分を求めていることを知った。
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