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脹相と恋愛〜大人〜

第5章 私からのハグ


その日は、特別なことがあったわけではなかった。

 夕方、二人で買い物から帰ってきて、荷物を片付ける。

 テレビをつけて、適当にソファへ座る。

 付き合い始めてから、こういう何気ない時間が増えた。

 そして最近の脹相は、少しだけ変わった。

 以前より近くにいる。

 隣に座れば肩が触れるくらいまで寄ってくるし、こちらが立ち上がれば何となく目で追ってくる。

 手を繋ぐことにも、少しずつ慣れてきた。

 だから――

「ねえ、脹相」

「なんだ」

「ハグしよう!」

 そう言って、両腕を大きく広げた。

「……」

 脹相が固まった。

 完全に。

「……脹相?」

「……待て」

「え?」

「……少し待ってくれ」

 いつもの落ち着いた声。

 けれど、様子がおかしい。

「どうしたの?」

「いや……」

 脹相は視線を逸らした。

 耳が赤い。

「……心の準備が」

「心の準備?」

「ああ」

 そう言った瞬間。

 自分でも分かるくらい、心臓が大きく跳ねた。

 ――ドクン。
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